今年もまとまった連休が取れたから、私はいつものようにヨーロッパのカジノに足を運んだ。
仕事はまあ、順調。
もう何年も大手の銀行で働いているし、お金に困ることはない。
独身生活も悪くないし、自由を楽しんでいる。
たまに夜を一緒に過ごすパートナーは何人かいるけれど、結婚なんて考えたこともない。
自分の時間も、お金も、自由に使えるのが何よりの贅沢。
だから、こうしてちょっとした休みができると、好きなギャンブルを楽しみに行くのが私の習慣になってる。
今回も向かったのは、ヨーロッパの老舗カジノ。
ラスベガスとはまた違った静かな上品さがあって、落ち着いた雰囲気が好きなのよね。
入り口をくぐると、古いけど豪華なシャンデリアが頭上で輝いていて、独特の緊張感と高揚感が一気に押し寄せてくる。
これよ、これが私が求めてるもの。
ふと、自分がどこか別の世界に足を踏み入れた気分になる瞬間。
現実の忙しい仕事や、いろんな面倒なことから解放されて、自分の心と向き合える時間。
ルーレットは私の得意分野。
いくつかの戦略は持ってるけれど、今回はコラムベットで攻めることに決めた。
コラムベットは、3列に分かれた数字の列に賭ける方法。
払い戻しが3倍で、少しリスクを分散させながらも、勝ちを積み重ねるには最適な方法だ。
もちろん、大勝ちは狙えないけれど、じわじわと資金を増やしていく感覚が好きなのよね。
テーブルに座った瞬間、ディーラーと目が合った。
静かで、穏やかな表情をしているけれど、その目の奥には確実にギャンブルの鋭い世界を見てきた人間特有の緊張感があった。
私も自然と背筋が伸びた。
ディーラーにとっても、私みたいな常連プレイヤーは見慣れているだろうけど、こっちも一筋縄ではいかないわよ、と心の中で軽く笑いながらチップを取り出した。
最初の賭け金は抑えめに、片方のコラムに100ユーロを置き、もう一つのコラムにも同じ金額を置いた。
ルーレットの回転が始まると、あのカラカラという音がいつも心地よい。
ウィールの回転音、ボールがウィールを跳ね回る音、その一瞬一瞬が心拍数を少しずつ高めていく。
自分の心臓の音が次第に大きくなるのを感じながら、ボールがどこに落ちるのか、じっと見守る。
この瞬間がたまらない。
現実なんて一瞬でどこかへ飛んでいって、ただルーレットと自分だけの世界に引き込まれる感じ。
そして、ボールがやっとウィールの上で跳ねるのをやめて、コラムの中に収まった瞬間。
勝ったわ。
たった一回の勝利だけれど、やっぱり気持ちがいい。
ディーラーが淡々と私のチップを払い戻してくれるのを見ながら、冷静に次のステップを考える。
負けることももちろんあるけれど、コラムベットでの基本は我慢。
焦らずに、少しずつ賭け金を増やしていく。
次も同じく、2つのコラムに賭けた。今度は少しだけ金額を上げてみることにした。
ディーラーの手元から再びルーレットが回される。
周りのプレイヤーたちも、それぞれの賭けに集中しているけれど、私はその中でも一歩後ろから全体を見渡す感覚でプレイしている。
慣れてるとはいえ、この緊張感は何度味わっても新鮮。
ボールがまたウィールを回っている間、周りのざわめきも少しずつ消えていって、全てがルーレットに引き寄せられていくような、そんな独特の空気がカジノにはある。
またもや勝利。
ディーラーは淡々とチップを払い戻してくれるけれど、その瞬間、私は内心でニヤリと笑っていた。
カジノで勝つことはそんなに簡単じゃないし、いつも勝てるわけじゃない。
でも、今夜の私は絶好調。
コラムベットは安定しているけれど、それでもこの勢いで勝ち続けるのは珍しい。
もう少し賭け金を増やしてもいいかもしれないと思い始めた。
今度は片方のコラムに500ユーロ、もう片方に500ユーロ。
合計で1000ユーロを一度に賭けた。
ここからが勝負の本番。
大きな金額を賭けると、やはり心の中での緊張感が全く違う。
負けたら痛いし、でも勝った時の喜びはその何倍も大きい。
ルーレットが回り、ボールがウィールの上を駆け巡る。
カラカラという音が徐々に小さくなり、やがて静けさが訪れる。
今度はどうなる???
一瞬、手に汗が滲んでいるのを感じたけれど、それも次の瞬間には消え去った。
ボールは私が賭けたコラムに入った。
息をつく暇もなく、ディーラーが次の回転の準備をしている。
だけど、私の目の前には勝利のチップが積み上がっていく。
すでに最初の資金の10倍に達している。
これだけ勝てば、しばらくは十分に遊べるし、また次のカジノ旅行も視野に入る。
周りのプレイヤーたちは私の勝利に特に驚く様子もなく、それぞれのゲームに集中している。
この冷静さがヨーロッパのカジノの好きなところ。
誰も派手なリアクションはしないし、騒がしい声も聞こえない。
ただ静かに、そして確実に勝負を続けていく。
一度チップを集めて立ち上がる。
今夜はこれ以上は賭けない。
勝っている時こそ、引き際が肝心。
もっと賭けたい気持ちはもちろんあるけれど、今夜はここまでで十分だ。
この余韻を楽しみながら、カジノを後にするのが最高に気持ちいい。
カジノの外に出ると、冷たい夜風が心地よかった。
ネオンに照らされた古い街並みを歩きながら、私は次の旅行先をぼんやりと考えていた。
ルーレットはもちろん楽しいけれど、ギャンブルそのものよりも、この自由な時間が何よりも私にとって大切なんだと思う。
好きな時に好きな場所で、好きなことをする。
それが私の生き方だ。
銀行のデスクで数字を見つめる日々も嫌いじゃないけれど、こうしてカジノで自分の直感と戦略を試す瞬間が、私の人生に必要なスパイスになっているんだ。
次はどこに行こうかな。
きっとまた、私はここに戻ってくるんだろうけど。