ルーレットは完全な確率ゲームであり、各スピンは独立した事象として扱われます。しかし、プレイヤーはしばしば「流れ」や「偏り」に基づいて誤った推論をしがちです。この誤解の代表例が「ギャンブラーの誤謬(Gambler’s Fallacy)」です。本節では、確率の独立性とそれに関連する心理的な罠について解説します。
確率の独立性とは
確率の独立性とは、「ある事象の発生が、他の事象の発生に影響を与えない」ことを意味します。ルーレットの各スピンは、ホイールの回転とボールの動きによって完全にリセットされるため、前回の結果は次回の結果に一切影響を与えません。
例:
- 赤が5回連続で出たからといって、次は黒が出やすくなるということはない。
- 「そろそろ0が出るはず」といった考えも誤りである。
ギャンブラーの誤謬とは何か?
ギャンブラーの誤謬とは、過去の結果に基づいて、将来の確率を誤って判断することを指します。典型的には、「確率は均等に分布するはず」という誤った直感に基づきます。
例:
- 「黒が続いているから、そろそろ赤が出るだろう」
- 「前回は0だったから、今回は通常の数字が出るはずだ」
これらは、確率の本質を誤解している例です。
統計的事実と感情のギャップ
人間はランダムな結果に「意味」や「パターン」を見つけようとする傾向があります。しかし、完全なランダム性のもとでは、連続した結果や極端な偏りも統計的には自然な現象です。
例:赤が10連続で出る確率は低いものの、「起きえない」わけではない。起きたとしても、それは完全に偶然であり、次回のスピンには何の影響も与えません。
戦略への影響
ギャンブラーの誤謬を避けることは、長期的に見て資金を守るうえで非常に重要です。短期的な偏りに基づいて賭け金を増やすようなプレイスタイルは、理論的には一貫して損失を生む可能性があります。
確率的には、各スピンの結果を「リセットされた新たな機会」として認識し、独立したものとして扱うことが、堅実な戦略の基本です。
まとめ:確率の本質を理解し、誤謬を回避する
ルーレットにおいては、すべての結果が独立しており、過去のスピンが未来を予測する根拠にはなりません。ギャンブラーの誤謬を理解し、冷静に確率と向き合う姿勢が、戦略的プレイの前提条件となります。
第3章 第3節「長期試行による収束とプレイヤー不利の証明」へ進む。