マーチンゲール法の構造と数学的限界

マーチンゲール法は、負けが続いた際に賭け金を倍にしていくことで、最初に勝利したタイミングでそれまでの損失を回収し、利益を得ようとする有名なベット戦略です。しかしその単純さとは裏腹に、数学的には重大なリスクと限界を抱えています。本節では、その構造と背後にある数理的性質、そして長期的に破綻しやすい理由を明らかにします。

マーチンゲール法の基本構造

マーチンゲール法の基本的なルールは次のとおりです:

  • 最初に一定額(例:$10)をベット
  • 負けた場合、賭け金を倍にして次のゲームに挑む
  • 勝利した時点で、すべての損失と初期利益を回収し、再び最初の賭け金に戻る

この方法では、一度の勝利でそれまでのすべての損失を取り戻し、最初の賭け金額分の利益を得られます。

指数的な賭け金増加

マーチンゲール法の最大の問題点は、連敗が続くと賭け金が指数的に増加する点です。たとえば初期賭け金を$10とした場合:

連敗数 賭け金 累計損失
0 $10 $0
1 $20 $10
2 $40 $30
3 $80 $70
4 $160 $150
5 $320 $310
6 $640 $630
7 $1280 $1270

わずか7連敗で、次の賭けに必要な金額は$1280、累計損失は$1270に達します。

カジノのテーブルリミット

現実のカジノでは、テーブルには最大ベット制限(テーブルリミット)が設けられており、無限に賭け金を増やすことはできません。たとえば最大賭け金が$1000に制限されている場合、7連敗目以降は戦略の継続が不可能となり、損失を回収できないリスクが高まります。

破産リスクと期待値の観点

マーチンゲール法は、数学的には負ければ負けるほど破産の危険性が高くなる戦略であり、以下のような数理的問題を抱えます:

  • 勝率が高くても、破産確率はゼロではない
  • 必要資金は理論的に無限大
  • 期待値はゲームのルールに従い、常に負(ハウスエッジ分)

つまり、マーチンゲール法は「勝てるように見える」戦略であっても、数学的にはプレイヤーに不利なことが証明されています。

まとめ:マーチンゲール法の限界

マーチンゲール法は一時的な勝利を演出する可能性はありますが、その代償として極端な資金増加と破産リスクを内包しています。現実的にはテーブルリミットと資金の有限性があるため、長期的な運用は非常に困難です。冷静な数学的分析に基づき、この戦略の危険性を理解することが重要です。


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